フクロモモンガは冬眠しないのです

家族
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僕はフクロモモンガを飼っています。名前をももちゃんと言います。ベタな名前だなあと皆に言われます(笑)

そして事件は起きました。

一昨夜のこと、夕食も風呂も済ませて部屋に戻ってももちゃんに声をかけた。名前を呼んでも反応が無く、ケージから逃げ出したかと思ってよく見るとハンモック型の寝袋の中で背中を丸めている。もう一度名前を呼んだがやはり反応がない。何時もならこちらを向いて「なんだようるせえなぁ」的な顔を見せるのだが今夜は全く無視している。まさかと思って寝袋に手を突っ込んで身体に降れたとき一瞬自分の体が凍り付いた。ももちゃんの身体は硬直して氷のように冷たくなっていた。

「死んじゃった・・・」冷たくなったももちゃんを握りしめて妻の寝室に駆け込んだ。

早朝、私が目覚めた時には私の姿を見るなり寝袋から飛び出してきて元気におやつをねだっていたのに一体何があったと言うのだろう。

ももちゃんのハウスを見て原因はすぐに分かった。朝、ハウスの掃除をするためにももちゃんの寝床にしていた毛布とそれに挟んでいた保温ヒーターを取り出したまま戻すのを忘れて出社してしまっていたのだ。

新年早々とんでもないことをしてしまったと後悔していても始まらない、私は部屋に置いてあるファンヒーターのスイッチを入れ室温を上げ、冷たくなったももちゃんを左の掌に右の掌で身体を擦った。手遅れなのはわかっていても「たのむ生き返ってくれ、生き返ってくれ」と願いながら身体を擦り続けた。何の変化もないまま30分程過ぎた時、ももちゃんの目がうっすらと開いた。「あ生き返った・・・」と思ったところで再び瞼を閉じた。

身体は相変わらず冷たくピクリともしない、私は奇跡を信じてももちゃんの身体を擦り続けた。更に30分程経ったときぎゅっと握りしめていたももちゃんの指が開き、握っている私の親指に爪が刺さった。よく見ると目も半開きになってこちらを見ている。長い尻尾がゆっくりと力無く動きだした。「やった今度こそ生き替えった・・・」身体の硬直も取れて来たようで握っている左手の親指を使って心臓あたりのマッサージを続けた。

やがて動きを取り戻し、一体何があったんだとでも言うように頭をクルクル回して周りを見渡し、掌の中を蹴飛ばしながら背伸びをして与えたおやつを夢中でほおばる。何時もの元気な姿に復活したのは時計の針が日付を跨いだころだった。

後に調べたところ、一説ではフクロモモンガは20℃を下回ると低体温症になるという、そして10℃を下回ると冬眠状態(偽冬眠と言うらしく所謂仮死状態)に陥ってしまうのだと。熱帯に住むフクロモモンガは冬眠はしないので偽冬眠が続き栄養不足になるとそのまま死んでしまうしかないのだ。

確かに一昨日の冷え込みは厳しかった、日中でも気温が上がらず寒い部屋でハンモック型の寝袋で凍えていたのだろう。私のうかつな行動で危うく大切な家族を亡くすところだった、命をあずかることの責任を痛感した新年。

ヒーターを入れた毛布の中で爆睡したももちゃんは朝には毛布を飛び出して元気に遊びまわっていた、いつものように手を出すと両手を広げて「ギーギー」と威嚇する。昨晩からの出来事が余程頭に来たのろう、果たして仲直り出来るのだろうか。

ももちゃんが我が家にきて早9年目、遠くない将来にこれが現実となる日が来る、私が生きていれば今回以上の悲しみと苦しみに襲われるのだろう。命をあずかる以上、覚悟はしておかなければならない。

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