4月4日 羽黒川(山形県)から闇川(福島県)釣行

 福島県の解禁なのに、何故、山形なんぞに出かけたのだ・・・

日に弟からLINEが来た、「明日どうすんの」、「え、明日?」ああ、解禁か。すっかりコロナ渦に巻き込まれて、待ちに待っていた解禁の事まで忘れていた。思わず「羽黒川+姥湯」と返信したら「姥湯はまだ冬眠中」と返事が来た。そうか温泉はだめか・・。それよりも何故「羽黒川」の名が出たのだろうか、例年、解禁は浜通りと決まっているのに、地元の福島県が解禁なのに何故山形県だったのだろうか・・。謎である。この釣行記を書いている今もって謎である。去年から続いた暖冬で今年は積雪が少ないと言う思い込みが、どこの川も今年は早くから釣りになるだろうと言う思い込みになって僕の脳みそに刷り込まれていたらしく、どうやらそれが、「山形の川ももう普通に釣れる」と言う判断になったのだろう。確かに暖冬で積雪は例年と比べてはるかに少ないけれど、今年になって何度か大雪が降った事はすっかり記憶に残っていなかった。

羽黒川
何があったのか分からないが、ここから先へは歩くしかない
羽黒川
何があったのか分からないが、ここから先へは歩くしかない

だ4月に入ったばかり、例年と比べれば絶対的に積雪量は少ないけれど山には確かに雪がある、そこに1日、2日と雨が降り、驚くことに今日の最高気温は21.2℃と平年を10℃以上も上回る天気、これで雪代が出なかったらそれこそおかしな話である。湯の沢温泉前の橋から川を覗いてみるとやはりかなりの水量で見事に雪代が入っている。しかも、早春にコカゲロウのトラップにライズするヤマメが見られた「時※の宿 すみれ」脇のポイントは去年10月の台風19号で跡形も無く消え去り、ただ真っすぐになった流れだけが厚みを増して下流へと流れている。「どうする?」と言う弟に「ここまで来たらに行くしかねえべ」と、水量と雪代に戸惑いながら車を上流へと走らせた。入渓予定の橋の上から川を覗くとやはり雪代が入っていて入渓できそうな状況ではない、この川での釣りを半ばあきらめたものもう少し上流も見てみようと林道を進むと、はるか先に何やら傾いて停車している車が見えた。何があったのかは分からないが、こちらに向かって走行中に道路の右側に脱輪したようだ、一つ間違えたら横転しながら谷底へ転げ落ちるところだ、くわばらくわばら。そこから徒歩で数分、いつもは脱渓する場所まで行ってみたが、雪代で濁った水は下流を凌ぐほどの力とスピードで流れ下り、完全に僕らの息の根を止めたのだった。

米沢ラーメン
細いちぢれ麺にからむさっぱり味の醤油味が米沢ラーメンの特徴、僕は結構好みの味
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細いちぢれ麺にからむさっぱり味の醤油味が米沢ラーメンの特徴、僕は結構好みの味

計の針は既に11時を指していた「そろそろ龍華りゅうげでお昼だな」とつぶやくと、「今日はもやしラーメンに決めてるんだ」と弟が言う。なんの約束も無いのだが暗黙の裡に今日のお昼は龍華りゅうげのラーメンと決まっていたらしい。「お食事処 龍華」は米沢市の小野川温泉街にある定食やで、この近辺の川に釣りに来た時には必ずと言って良いほど立ち寄る店だ。僕はいつもの米沢ラーメンを弟は今日の予定通り豆もやしラーメンを注文した。話は釣りから遠ざかるが、僕は大のラーメン好きで出かけた先では良くご当地のラーメンをいただくのだが、最近は米沢ラーメンが一番のお気に入りである。細い手揉みのちじれ麺はスープのなじみが良く大量に口に入れてもその細さゆえの細やかな食感を生む、スープは鶏ガラと煮干しがベースのあっさり味で麺の細さと相まってさらっといただけるのである。数ある米沢ラーメン店の中でも僕的には上位に位置するラーメン屋が「お食事処 龍華りゅうげ」である。ずーっと”りゅうか”と呼んでいたが正しくは”りゅうげ”と呼ぶ。ついでにもう一つ、弟が注文した豆もやしラーメンは白い茎の長い豆もやしが麺の上にのっている。実はこの豆もやしは、ここ小野川温泉の名物で明治の初期から造られている。「もやし豆」という在来種の大豆を他の大豆と混じらないように生産者が地元で栽培して来た貴重な大豆と小野川の温泉を使って作っている。因みに龍華りゅうげの駐車場脇に「豆もやし」を栽培する室掘小屋むろほりこやが有るので興味のある方は覗いてみると良い。

て、すっかり満腹になった僕らはこの後どうしようかと悩む、大峠を越えて喜多方に入っても雪代と増水に変わりはあるまい。まさか自宅を超えて浜通りに行くわけにもいかないし、南会津も今からじゃ遠いし。「闇川くらかわでも行ってみる」と言う弟の言葉に一も二も無く同意したのは闇川くらかわの名前は知っていたが今まで一度も行ったことが無かったからだ、芦ノ牧温泉辺りならもう雪代も落ちついてるかもしれない。新しくなった神明通りのアーケード街を抜け芦ノ牧方面に車を走らせた、温泉街のセブンイレブンで会津非出資漁協の日釣り券を購入して山に向かう。途中の渓は深いがなかなか良さそうな雰囲気だが、時間も無い僕らは入渓しやすそうな場所を求めて更に上流の集落へ向かった。流石に集落に近づくと釣り人が目立ってくる、駐車しようと思う場所には既に車が入っている。「ここ、人気河川だから人多いんだよね」と弟が言ったが、確かに釣り人は多い、皆さんそろそろ引き上げる時間だろうが、ポイントポイントに釣り人が立っている。僕らは集落の外れの空き地に車を停めて川に降りた。なるほど人気河川らしく土手や川岸に多くの踏み後が残っている。

闇川
この流れ込みでライズに翻弄された、春先のライズを逃すことは少ないのだがプレッシャーがかかっていたのだろう
闇川
この流れ込みでライズに翻弄された、春先のライズを逃すことは少ないのだがプレッシャーがかかっていたのだろう

度も早々に川に降りた、小さな堰堤の上の大きくカーブする流れ、見た目では分かりにくいが上流から流れの内側を通って右岸の護岸に沿って反転流が出来ている。白泡が反転する流れの内側に浮かんでいる、ここには必ずいるはずだ、僕はフライロッドを右の小脇に抱えてティペットにフライを結んだ。振りむけば僕の後ろと頭上には木が茂っていてバックキャストするスペースは無い、ここはロールキャストで対応するしかないだろう。フライを流れ込みに落とすと反転流と流れ込む水流の間でフライが停まってしまいやがて手前の本流にラインが引かれてフライが流されてしまう。今度は反転流の少し手前にフライを落としてラインを軽くフリップする、フライは反転流に乗って護岸の脇を通り上流からの流れに沿って白泡が浮くあたりに戻って来る。同じ場所に二投目、同じように流れたフライが白泡の手前に行こうとした時、手前の流れにラインが飲まれてフライがスーッと引かれたと同時か先かバシャッと水飛沫を上げて良型のヤマメがライズした。残念ながらフッキングしなかったが、そこにいるとわかればモチベーションは一気に上がる。しかし、その後数回キャストしても反応が無い、フライをピックアップしドレッシングをし直していると遅れて弟が入渓して来た。「今ここでライズしたから・・・」静かに上に行くように促して川面に目を移すと、バシャッと飛沫を上げてあいつがまたライズした。

を捕食しているのだろうか結構派手なライズだ、カワゲラかカディスなんかが出ているのか、僕の目には数匹のマイクロユスリカくらいしか見えないのだが。暫く様子を見ているとまた飛沫を上げてライズする、ライズのインターバルはかなり長く、気の短い僕には結構な試練の時間である。フライをオナシカワゲラパターンに替えて流れに乗せる、数投目でフライに出るのだが手前の流れでラインドラッグが掛りうまくタイミングが合わない、今度はコカゲロウのパターンに替えてみる。そうやってとうとうライズの罠に陥ってしまうのだ。同じことを繰り返してどれくらい時間が経っただろうか、ちょっと目先を変えて流れ込み脇の静かな溜まりと本流の筋の境目辺りにフライを落とした時、水中からSLBMのごとく垂直に飛び出して来たチビヤマメを思わずフッキングしてしまう、プルンプルンと空中で暴れるとバーブレスのフックを外して水面に落下した。勿論、その後この反転流から飛沫が上がることは無かった。落胆のため息でふと我に返る、どれだけの時間散発ライズに遊ばれていたのだろう、弟はいったい何処まで行ったのだろう。初めての川だし状況も分からないまま放り出されてはたまらん。慌ててラインを巻き取って上流に向かった。

ーブの何やら素敵な場所でに弟がかがみこんでいた、「フォ~い!」と弟を呼んだ。川の流れの中で「お~い!」と呼んでもなかなか聞こえないので僕はゴルフの「ファー!」の要領で「フォ~い!」と呼ぶ。いくらか違う気がするのだが本当のところは分からない。幸い僕の声を聞き取った弟は振り向くと右手を高く振りかざした。たった今ネットインしたばかりのなかなか良いサイズのイワナ(後で知った)をぶら下げている。「そこの流れの尻でヤマメが、ここのプールでイワナが釣れた」こぼれそうな笑みをこらえながらそう言った。「くそう!俺がライズに翻弄されてる隙に・・・」心の中で、悲しくつぶやくのだった。

の上の流れは、だらだらと瀬が続くポイントで盛期なら最高の場所なのだが果たして、僕は慎重にストーキングして流れを覗く、あそことあそこ、魚の付きそうなポイントを確認してラインをリールから引き出しフォルスキャストを2回、フライは狙ったポイントの上を静かに流れるが反応は無い。今度はその流れの内側をと少しだけ方向を変えてバックキャストする、フォワードキャストに移った瞬間あの忌まわしい感触がグリップに伝わった。「なんだ?」左岸から張り出した木の枝にフライが掛り、ロッドが弧を描いたまま停止した。「なんだよ~そんなとこに枝が出てたのか・・」フライは数本の枝に絡み、ティペットごと切るしかなかった。ティペットとフライを交換し、気を取り直して再び同じポインとにフライを落とす、今度は後方の枝の位置も確認したから大丈夫・・の筈が、またしてもフライが枝を釣った。「きー!何なんだよ!」何とも言いようのない声を発してロッドをあおった、あおったところでフライが外れるはずも無いのは分かり切った事なのだが。不注意なのか、へたくそなのか、同じことを二度やるか、自分のキャストのお粗末さを呪うばかりである。確かに僕のキャストはハイバック気味に投げるものの、枝の高さは確認したし一体何事なんだろう、キャスティングも歳とともに老化するのだろうか。

服
頭からつま先までビショビショになった、このまま家まで帰ったが翌日熱が出た事は秘密にしておこう
服
頭からつま先までビショビショになった、このまま家まで帰ったが翌日熱が出た事は秘密にしておこう

度は外れそうな掛かり具合なのでフライを外そうと川に入り枝の下まで進んだ。ロッドティップで外そうとするがしっかりフッキングしていてどうにも外れない、仕方なくティペットを切り右岸に戻ろうと右足を回転させた途端、右足は重力から解放された。その重力が左足に移動する間もなくバランスが崩れ、両手を広げたまま上流に向かってダイビングする羽目になった。上流に向かって倒れるとかなり悲惨な目に遭う、あっという間にウェーダーが水を取り込んで達磨のようになってしまう。まあ、既に身体のほうがアルコールを取り込み過ぎて達磨状態になっては居るのだが。幸い、頭から全身水浸しになったものの、ウェストベルトをきっちり占めていたので浸水は少なくて済んだ、それでもシャツからソックスからパンツまでビショビショになった。

日は、会津若松でも最高気温が20℃を超える程暖かかったが水泳には流石に早い、全身が一気に冷え込み身体中の血管が収縮するのがわかった。ぶるぶる震えながらかじかんだ指でティペットを結び直しフライを結んでいると突然に大粒の雨が降り出してびしょ濡れの僕をバチバチと音をたてて追い打ちをかけた。そう、ちゃんとレインウェアは持ってきたよ準備は万端さ、ただ、車の中に置いてきただけさ。まさに泣きっ面に蜂とはこのことだ、気丈な僕はそれでもめげずに釣りを続けた。少し上流に移動してキャストを始めた途端にまたあの忌まわしい感触が五本の指に伝わった、またしても左岸の木の枝、勿論さっきの木とは別の木である。「ギャ~!」「なんなんだ!」「気が狂う!」「☆■▼○・・・・」解析不能の声を発しながらティペットを引きちぎった。とち狂う僕を岸で眺めていた弟の顔も引きつっていた。弟に上流に行くように促して僕はまたしてもティペットの交換、全く釣りをする暇がない一体何が起こったと言うのだろう。

CASER-FLIP
TALEXのイーズグリーンを入れたCASER-FLIPがどこかに消えた。写真のレンズはアクションコパー、光量が少ない日にはちょっと辛い
CASER-FLIP
TALEXのイーズグリーンを入れたCASER-FLIPがどこかに消えた。写真のレンズはアクションコパー、光量が少ない日にはちょっと辛い

流に移動た弟は、低い堰堤下のプールでロッドを曲げている、僕はと言えば寒さ震えた手でティペットとフライの交換に明け暮れていて一向に釣りにならない。流石に気丈な僕も、降ったり止んだりの雨に打たれて、これ以上気力も体力も続きそうも無い、ビショビショ、ブルブル、クタクタ、ヨレヨレ、トボトボ・・・。川から上がり車に向かう途中ちょっとした異変に気付いた、なんだろう視界が妙に明るい「あれ?」そう、眼鏡に付けていたシーザーフリップが無いのだ、愛用のTAREXのイーズグリーンの偏光グラス、沈した時なのか土手を這い上がる時なのか分からないが僕の元から消え去ったのである。また、2万ちょいの出費かあ・・・辛すぎる。

れを書いていて一つ気づいた事がある。この日はいつもの7FTの竿に替えて8FT半の竿を持ってきていた、そのことを全く考えていなかった僕は立木の位置を確認しながらも枝を釣ると言う離れ業をやってのけたのだ。何故この竿を持ったのか明確な理由も見つからないのだがトラブル続きの原因はロッド長だった、 たかが1FT半、たかだか45,6センチだがラインの位置は大きく変わる、いつもより長い竿を持っている事すら自覚していなかった間抜けな親父、そりゃあ何度も同じこと繰り返すわな。

今季連続で「ボ!」である。
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