5月24日 阿武隈川釣行(試験採捕)
試験採捕体験組合員出動
福島第一原子力発電所の事故により制限が掛っていた阿武隈川漁協の管轄流域の内、福島市の信夫ダム上流のイワナに対する採捕及び出荷制限が解除された。いよいよ残すヤマメの制限解除により遊漁制限の解除になることが期待されているなか、阿武隈川漁協では組合員による試験採捕を4月1日より開始した。私も試験採捕組合員の許可を得て阿武隈川を釣って来た。
8時半ぐらいに川に着いた、日曜日だしもう少し釣り人がいるかなと思ったのだが駐車スペースに車はない。これは良い釣りになりそうだ、口角が自然と上がる。ただし、漁協では放流も実施していなかったらしいので魚が居るかどうかは釣ってみないと分からない。川に降りてティペットにフライを結び、いかにもイワナが居そうなポイントに立った。段々の落ち込みの最後の大きなプールは右岸からの細い流れを交え直ぐその下流で大きく左岸側にカーブしている。プールの開きは堆積した砂利が浅瀬を成して早朝の時間には餌を求めて深みから出てユラユラ泳いでいる筈のポイントを前に気が逸る。準備は完了、開きに目を凝らしてみる。残念ながら魚影は見えない、そっとフライを流してみるが反応は無い。流心の脇、落ち込みの周りのたるみとフライを落とすが何も起こらない「えっ!こんな好ポイントに居ないの?・・・」人が入った様子も無いしまさか魚がいないって事は無いだろうな、一瞬にして上がった口角が下がる。
流心向こうにほんの小さな巻き返しを見つけた、直径30cm位のそれに小さな白泡が3つ4つ浮かんで静かに踊っている。太い流心の向こう側、キャストしてもあっという間に流心にラインが取られるのは必至だが一応フライを落としてみる。10数年ぶりの川、釣れるかどうかよりイワナが居るかどうかの方がはるかに重要なのだ。フライは狙い通りに白泡の隣に落ちた、ティペットに若干のスラックを作り、ラインを上流にフリップするがラインはあっという間に流心に飲み込まれ、ライは反転流に乗る間も無く下流に引かれ、それを追うようにイワナが飛沫を上げた。残念ながらこの流れに#2の竹竿では合わせが効く訳もなくイワナは流れに消えた。それにしてもイワナの出方は思った以上に速い、かなりスレてもいるようだ。いずれにせよイワナが居ることは分かった、そうと分かれば心は晴れる。段々と続く落ち込み脇の弛み、もうここしかないだろうと思うポイントからはやはり音沙汰が無く細い分流の先の小さなポイントにイワナたちは隠れていた。想像以上に釣り人が入っているのだろう、イワナは大場所からはほとんど姿を見せなかった。上流の河原の砂の上にはそれを裏付けるように無数の足跡が残っていた。おそらく昨日の釣り人の物だろうか。
やがて、目の前に右岸から左岸へと倒木が川を塞ぐ好ポイントが現れた、まるで釣りキチ三平の漫画にでも出て来そうな風景である。ここにイワナが居ない訳が無い、予想通りにイワナは右岸の石の下流から、そしてその石の上流でもフライを咥え、木の枝が覆いかぶさった流心向こうの流れからは尺イワナも顔を出した。このポイントだけで3尾のイワナが釣れた。やはりこのポイントのイワナも大場所の脇の小さなポイントから姿を見せた、パターンをつかめればイワナは釣れる。僕が軽快に釣果を伸ばしながら上流を目指していると、目の前に一人の釣り人が姿を見せた。どうやらルアーマンらしい、河原もないゴルジュの中で先行者が居たら流石に釣りにならない、僕はベストを脱いで傍らの大石の上に置き、バックポケットから朝飯のおにぎりを取り出した。しかたない、のんびりと朝飯でも食って少し川を休ませてから釣り上がろう。
腹を満たし少し落ち着いたところで、半分あきらめモードながらルアーマンの後を追う、ところがどうしたことか予想に反してイワナの出が良いのだ。先行者がよほど釣りが下手なのかそれとも釣られてもまだ溢れるくらいにイワナが棲んでいるのか。不思議を通り越してすっかり先行者の事も忘れイワナパラダイスを満喫した。最終の滝を前に、先行したルアーマンが戻って来た、挨拶をし、「どうでした釣れましたか?」尋ねると「いやあ、ダメですね20cmくらいのばかりです」と言う返事。やはりルアーが引けるような大場所にはイワナは付いていないのだろう、大場所を見切ってフライで小場所を中心に釣りがる私の方に女神が振り向いたいたのかもしれない。無事イワナは住んでいたしそれなりのサイズにも育っていた。
試験採捕初日はまずまずの成果で追えることが出来た、何よりもこの川で釣りが出来たことが嬉しい、早く昔の川に戻りのんびりと釣りが出来る日が来るのを期待して止まないのである。