5月25日 鮫川支流 四時川釣行

 橋の下に集合の日

年も、橋の下に招集がかかり喜び勇んで出かけて来た。召集元のKさんは午前中に着くとの事だったので、僕も午前中には着くように家を出た。おそらくお昼はまだだろうから現地のスーパーで食糧を調達してから集合場所に向かった。公民館の駐車場に車を停めて川を覗くと流れを前に立つKさんを発見、ロッドを小脇にフライの選択中でした。HADYのバッグをタスキに掛けて相変わらずカッコの良い事。背後から驚かしてやろうかと思ったが、久しぶりの釣りの邪魔しちゃいかんと、声をかけるのを止めてお昼の準備をすることにした。その前に、遊漁券を買わなくちゃならん、川の傍の簗場で今日と明日、二日分を購入した。「あれ、さっき東京の人も二日分買っていったよ」と簗場の食堂のおばちゃん。そりゃあ、そうだわ連れだもの(笑)簗場のおじさんは「あと一日釣ると思えば、年券買った方が得だっぺよ」と言う、仰る通りで、去年までは年券買っていたのだが、個人的に今年は会津を釣るって決めていることもあり、そろそろ会津の川がシーズンに入るし、いわきを釣る機会は多分今日が最後かなと思ったのだが、よく考えれば、福島県の解禁当初はいわきの川がメインだし、今年も既に4回目だし、やっぱり年券買っとくべきだったか。

冷や汁
宮崎名物の冷や汁が今日のお昼。
冷や汁
宮崎名物の冷や汁が今日のお昼。

ーパーマーケットで昼飯の食材を探していたら、宮崎の麦味噌を発見した。「へー、珍しい」ならば、お昼は宮崎名物の冷や汁にするべと、急遽冷や汁用の食材を集める。アジの開きときゅうりと豆腐に茗荷、小葱と大葉そしてすりごま・・・。何かの役に立つかと思い、車に積んできたスモーカー兼バーベキューコンロに炭を起こす。去年リサイクルショップで未使用品1890円で買ったやつ、これがなかなか使い勝手が良いのである。ここで、OUTDOOR用冷や汁レシピを、まずアジの開きを3枚、焼き網に乗せ、猫ちゃんやカラスさんに襲われないようコンロの蓋をします。その間にだし汁を作り、レトルトご飯を温めておきましょう(まあ、何でも良いのだが)アジが焼けたら丁寧に小骨を取りながら身をほぐしその身と宮崎の麦味噌とすりごまを合わせてコッヘルの底に平らに伸ばします。それを、キャンプ用バーナーであぶり焦げ目を付けます。そこに砂糖を少々入れて(まあ、無くても良いけど)、作っておいただし汁で溶いていきます。水分を切った(めんどくさいので切らなくて結構)豆腐を手で崩して投入します。豆腐を入れるか入れないか意見の分かれるところでもありますが、僕は居れます絶対に居れます。ちょっと味が濃い目のところで大量のロックアイスを投入しすりごまを追加したら薬味に小口ネギ、茗荷と大葉の千切りを加えて出来上がり。暑い日の野飯にゃあ最高なのだ。Y君も来るのかと思い多めに作ったのだが、到着が夕方になるそうでKさんと二人でお昼にした。

の日の最高気温は福島市・郡山市で34℃の予報、5月だと言うのになんちゅう暑さだろう、ところがいわき市の予報はなんと24℃で浜通りと中通りの気温差10℃だった。夏は涼しく冬は暖かく山あり海ありヤマメもイワナも釣れるしスズキもヒラメも釣れる。いわきの住みやすさったら天下一なのである。と、いわきのコマーシャルも入れておく。昼を済ませて、Kさんはいつものお気に入りの区間に、僕はずーっと上流の区間に入ることにした。実は若かりし頃にこの川の下流の町に7年ほど暮らしたこともあってこの川は当時僕のホームグランドだったのである、だからこの川のポイントなら大抵は知っている・・・筈である、釣れるかどうかは別の話だが。

四時川
この川の美しく澄んだ流れと渓相は今も昔も変わることが無い。
四時川
この川の美しく澄んだ流れと渓相は今も昔も変わることが無い。

流に向けて車を走らせる、当時は何もない山村だったのだが今は地産の食材を使ったレストランやら流行りのCafeやらが出来て少しでも都会人を誘致しようという切なる思いが伝わってくる。南大平地区を左折し更に上流を目指そうとした途端、目の前に通行止めの看板が現れた、どうやら鉄塔の工事らしく立ち入り禁止になっていた。これは困った、一気にモチベーションが下がってしまったじゃないか・・。悩んでも始まらないので発電所脇に車を停めて、そこから少し釣り上がってみることにした。準備をして河原に降りてハッとした。本当にこの川の渓相は素晴らしく、透きとおる流れの美しさは特筆ものである。昨今は異常気象がもたらす水害により各地で荒れ果てた河川が増える中、僕がホームグランドにしていた当時とそれほど変わらない渓相を保っているのも驚きである。渓相は相変わらず美しいものの、足元の砂にはおびただしい数の足跡が残っていた。入渓しやすい場所でもあり、上流へは通行止めだし、釣り人の考えることは一緒なので仕方がないのだがそれにしてもちょっと多すぎないか。早速、フライを流し始めた。一つの流れにポイントはたくさんある、右岸左岸の落ち込み、流心と大石の間の還流帯、左右の大石の裏の巻き返し、左右の流れの合流店、流心の開きの沈み石、落ち込みの肩を分流する大石の周り・・。ひとつひとつ丁寧にトレースするが反応は無い。まだ午後一時を回ったばかりだし反応が無いのも仕方ない、それでも間違って出てくるひょうきん物が居ないとも限らない。更に丁寧にポイントを探っていくと、あきらかにちびヤマメだろう反応がある、しかもかなりシビアなチェイスでフライを咥える気など毛頭無いようである。入渓点から20mほど進むと、発電所の石垣に沿って流れが直線になる場所の尻でちょいと良い感じのヤマメがフライを咥えたが、ヤマメの重量を感じた瞬間に何か異様な感触を残してフックアウトした。この奇妙な感じはまた別の機会に取り上げるとして、運悪くフックアウトしたフライが左側の木の枝に絡んでしまいロスト、気を取り直してフライを結び変えていると目の先20mほどに土手からおりてくる釣り人を発見した。こちらをチラッと見た彼は、悪びれることなく釣り竿を延ばし何事も無かったように釣り糸を垂れた。そのお行儀の悪さにあきれて、「この野郎・・」と胸の奥で呟いてはみたものの喧嘩するのも面倒くさいし、もうそろそろ仙人になってもおかしくないぐらいに歳を重ねてきたことだし広い心で譲ってやることにした。入渓点まで戻るほんの数十メートル、「ふざけんなよ、駐車場に車あるのわかってんだろうが・・・!」怒り心頭の仙人なのであった。

四時川
フライを交換していたら目の前に釣り人が入って来た。トラブルは嫌だからお行儀良くしましょうね。
四時川
フライを交換していたら目の前に釣り人が入って来た。トラブルは嫌だからお行儀良くしましょうね。

て、どうしたものか、少し下って下の橋から入渓する。ここも入りやすいの場所なので結構な数の足跡が残っているが、そろそろ時計の針も3時をまわりヤマメの活性も上がってきている筈だし、一匹でも釣れればいいやくらいの軽い気持ちで入渓する。(まあ、いつもの事である)橋の上の見た目絶好のポイントは何の反応も無し、もとより想定済なので別に気にする事でも無い。次のポイントは小さな段々を流れ落ちるごとにたくさんの酸素を抱え込んだ水が落ち込み、沈み石が沢山ある厚い流れはヤマメの格好の隠れ家になっている、ここに居ない筈はない。釣れるかどうかは全く別だけど(しつこい)。流心脇をドラッグフリーで流してやる、「ほら出た!」小さいけど綺麗なヤマメだね、可哀相だけどちょっとだけ胃の検診をさせて頂く、出て来たのは極小ニンフが3匹だけ、4日前に大雨警報が発令された程の大雨が降った後なので餌になる虫たちも流されてしまったのだろう。段々の流れの最上部は広いプールの流れ出しになっていて、左岸に小さな流れ込みを持2m四方ほどの小さな分流があった、「ここにはいるよな」独り言を呟きそっとフライを落とすと小さな飛沫が上がってロッドがしなる、「ほらね♪」作戦成功の喜びに浸る間もなくあの妙な違和感を感じた。シャイなヤマメは僕と目を合わせることなく沈み石の隙間へと消えて行った。

四時川のヤマメ
やっとヤマメが顔を見せてくれました、これだけで今日の釣りは満足。
四時川のヤマメ
やっとヤマメが顔を見せてくれました、これだけで今日の釣りは満足。

取りあえずヤマメの顔は拝めたしそろそろ、橋の下に戻ろう。一休みしているところにKさんが戻って来た、そこそこ釣りになったらしいが「いや、凄い人に会いましたよWINSTONの延べ竿でフライをするって言う人に・・」-「えっ?延べ竿・・Winston?」-「どうもフライフィッシングを長い事やってるらしいんだけど・・多分、地元の人だと思うんだけど・・・」そんな話をしているところに、Y君が到着した。その話をすると「たぶん、俺の知合いですよ、フライフィッシングを極めて究極の釣り方になった〇さん」-「へー、究極ねえ(笑)」Winstonの延べ竿がどうかは別にして、そんな釣り方があっても良いなあと思いながら談笑しているところにこれまたタイミングよく、噂の御仁が車で現れた。この川のポイントの事やら釣り方の事やら川の周りの草刈りをしている事やらいろんな話を聞きく、「皆んな遠くから釣りに来てくれんだから草ぐらい刈ってやらないとなあ、俺は地元だから他から来た釣り人が居る時は竿出さないことにしてるんだ」とか、いやあ僕の様な俗人には到底たどり着けない境地である。いろいろ話していたら、どうやら僕がこの地を後にした時期に、地元の僕の友人にフライフィッシングを教わったのだそうで、その頃の話で盛り上がったりしたのでありました。

も傾き始めていよいよイブニングタイムの始まり、小さなライズがの数が増え始めまる。時折、大きなヒラタカゲロウのダンが川面を流下していくが水面下に飲み込まれることも無く静かに流れ去って行く。何を捕食しているのだろう、心臓が止まるくらいのドーン!と言うライズを待っているのだが残念ながら期待は期待のまま陽は暮れて行くのだった。KさんとY君が釣り場に向かった後、フライを#12のH&Lバリアントに結び替えて下流の浅場に入ってみる、しかしこの辺りは全くライズも無いしフライを流しても反応が無い。少し上流のプールの尻で時折起きる小さなライズはフライラインが宙を飛ぶだけでぱったりと止まってしまう、さっきまで地元のフライマンが叩き続けていた場所だから仕方がないのだけれど、どうやらイブニングも流れの中じゃなないと釣れそうにない。流れの脇で小さなライズがあった、既に陽は陰って水面のフライはほとんど見えないくらいになっていた、ぼんやり霞んだウイングの白いカーフテールが辛うじて存在を示しているだけだ。パシャっと音がして白いカーフテールが消えた時、今日の釣りが終わった。さて、これから橋の下で宴会を始める予定なのだがY君は家に帰らなければならないらしく、執拗に酒を進めるのだが、その意志は鮫川の石よりも固かった。残された親父二人でバーボンを浴びながらフライ談議に花を咲かす、お互いに長い事この釣りをしてきているのでそれぞれに拘りもあり、あーだこーだと話は尽きない。そろそろ、簡単に立てたテントに潜り込む。しまった、テントマットが車の中だ、酒もまわりテントを出るのも面倒なのでそのままシュラフに潜り込んで寝てしまうことにした。夜中、大地の温度がシュラフの薄皮一枚を伝って体にしみこんできた、「うう、冷たい・・・」体の向きを変えてまた眠りに着くのだが暫くすると「うう、冷たい・・・」そして体の向きを変える。朝まで何度繰り返したろうか、目覚めた時には身体はパキパキ、テントを出ようとしたが腰が痛くて出られない、ようよう這い出して腰を延ばした。

釣り人
今日は朝からキャスティング練習の日。NさんとKさん。
釣り人
今日は朝からキャスティング練習の日。NさんとKさん。

さんは、「少し釣りしてきます」と出かけて行ったのだが僕はというと腰が痛くて歩くのも辛く、居残りでキャンプをたたむので精一杯。そうこうしているうちに、Nさんの車が到着した。Nさん、今日はKさんにSPEYキャストの指導をしていただく予定でした。僕もちょっとばかりロッドを拝借して、朝のまったり時間がすっかりキャス練の時間になったのだった。本当なら今日も一日釣りする予定で遊漁券も購入したのだが、流石にこの腰の痛みは耐えがたく、早々にリタイヤすることになってしまった。Kさん、最後まで付き合えなくてゴメン、またそのうちにね。

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