6月2日 戸石川、鶴沼川釣行
そろそろ会津も良いよね
そろそろ、会津も川も落ち着いただろう。「突然だけど釣りに行って来るよ」と言い残し10時過ぎに家を出た。ここ数年、山形界隈の釣りが多くなっていたので今年は福島県の釣りにこだわってみようとの思いもあって南会津の年券も購入していたのである。時間も時間だし、鶴沼川辺りでお茶を濁そうと思って車を走らせたのだが、「ここまで来たら会津の川見て来なくちゃだめじゃね」-「えー、時間ねえしなあ」-「せめて下郷くらいは行かなきゃなるめえ」-「戸石川かあ、釣り人入ってて釣りになんねえんじゃね」-「じゃあ、山超えて昭和村行くか多分釣れるべ」-「だから、時間がねえっつうの」と、独り芝居をしているうちに鶴沼川の入渓場所を通り過ぎ湯野上温泉を通り過ぎた。覚悟を決めて戸石川へと向かう、昔は随分と通ったものだが最近の釣り人の増加と合わせて数年前の大雨で多くのポイントが埋まってしまった事もあり、暫くご無沙汰していた。
いつも車を停めさせてもらう橋の袂は、普段なら必ず車が停まっているのだが今日は久しぶりの僕のためにわざわざ開けていてくれたみたいだ。時計は12時30分、とりあえず様子を見ながらのんびりと釣り上がってみよう。途中のコンビニで買ってきたパンを齧りながら支度に取り掛かる。いつものように、ウェーダーを履き、シューズを履いてベストを着こみキャップをかぶる。ロッドにリールを取り付けガイドにフライラインを通す。リーダーにティペットを繋ぎ、フライは#16のピーコックのクィルボディのソラックスパターンを結んでフックキーパーに掛けた。さて、眼鏡を偏光グラスに交換していよいよ・・・と、「あれ?偏光が無い!」そう言えば家の何処かで見たのを思い出した。こんなところに置いといたら釣りの時に忘れるなあと思ったのが結局その通りになっちまった。これから西日に向かって釣り上がるのに偏光グラスがなくっちゃあ釣りにならない。車の中を物色していたら、SWNASの跳ね上げフレームの偏光グラスを発見した。このSWANSレンズに遮光用のカバーが付いているので視界が非常に狭く渓流を遡行するには極めて不向きなのと、老眼鏡のレンズをガラスレンズにしたのが想像以上に重く、ずっと御蔵入りしていたのである。それでも無いよりはまし、やっとの事で川に立つ、「うっ、見にくい」。取りあえず一投目は橋脚沿いを流してみる。出てもよさそうなのに反応が無い、きっと普段から攻められてるんだろうなあ。橋の上の深みの上流、両岸から柳の枝が流れを覆いトンネルになっている、その際にフライを落としたトンネルを抜けて解放された流れに揺らめくフライにパシッと素早いライズがあった、どうやら木っ葉ヤマメらしい、想定したイメージとは程遠いライズに落胆し、上流に移動することにした。少し広い瀬の流れ、イブニングに良い思いをしたポイントだ。右岸の岸沿いに良い流れの筋が出来ていて良型が潜んでいそうなのだが思いに反して、浅い瀬の沈み石にヤマメが付いている。瀬の開きでまたもやピシッと言う木っ葉ヤマメのライズだ、「まじか・・・頼むよ・・・」もう既に神様の背中を追い始める自分がいる。今のポイントから1mほど上の流れ、ほんのちょっとだけ波が立って流れが変化しているその上にフライを落とした。今度はバシャッと素敵な音を立ててヤマメの背中が反転した。2番の竹竿が気持ちよくしなる。「お、やったね・・」正直、今日の釣りがどうなる事かと思っていたのだが、取りあえず居ることは居る。結構良いサイズのヤマメだ、瀬を縦横無尽に走り回る、少しおとなしくなったころを見計らってテンションをかけつつ竿を立てると、あの忌々しい感触を残してロッドに伝わる感覚が消えた。
あの忌々しい感触と言うのは、こう言うことである。バーブレスフックを使っていれば、何らかの原因でロッドへのテンションが切れてしまって掛けた魚をバラシてしまうことはよく有る話なのだが、今回の話はちょっと違う。言葉で表現するのはとても難しいのだが、果たして伝わるだろうか。先週の鮫川の釣行記にも書いたが、フッキングして取り込もうとした矢先、たぶん魚が頭を振るとか、動きを変えた瞬間にそれまでかかっていたテンションが一瞬クニャっとした感じで解け、それが戻る時にフックアウトする感じなのだ。実は今年からそれまで使っていたTMC103BLの代わりになるかと思い、少し値段の安いフックを導入してみた。シャンクも細くてデザイン的にもフッキングも良さそうなので今シーズン初めのメイフライパターンはほとんどこのフックを使用したのだが、実はタイイングの時から気になっていたのがシャンクが良くしなるのである。特に#10位のフックサイズになるとよく解るのだが、スレッドを引くとそれに合わせてシャンクもついてくるのである、釣りの時に大丈夫かなあと少々心配しながらタイイングしていたのだがこれが現実となったのである。
さて、釣りの話に戻るが、何とも困ったことがもう一つ、川底の石が異様に良く滑るのである。先週の釣行時にソールを交換したばかりなのに何故これほど滑るのだろうか、偏光グラスの見にくさと合わせてもう危険が一杯の遡行なのである。こればかりは致し方ないので注意に注意を重ねて進むのだが何度滑ったことか、二度ほど沈した。幾分水深のある見るからに好ポイント、CDCのウイングをすっと立てたソラックスパターンがゆっくりとユラユラ揺れながら流れると、突然飛沫が上がり丸々と太ったヤマメが水面を割った、まるで、イルカショーのジャンプのような姿は矢口孝雄先生が描くヤマメそのものだ。一瞬空中に静止したかと思うと水面めがけて飛び降り水飛沫とともにリーダーも水中に突き刺さった。「わお!」思わず声が出た、同時に心の中では「まさか・・・」と呟いた。それにしても良い引きだ、水深がある分深場を走るので水面を切って行くリーダーのきらめきが何とも美しい。上流に走るリーダーに軽くテンションをかけ水底のヤマメの顔をこちらに向けようとした時、ヤマメが頭を振った、そう、あのクニャっとした感覚がロッドティップに伝わりテンションが切れた。「ああ、なんてこった」おそらくフックが原因なのは間違いないだろう、しかし、今シーズンのメイフライパターンは殆どこのフックで巻いたのである、結構なショックを受けたまま、底石に足を取られながら移動すると更なる試練が待ち受けていた。鴨さんカップルが今日も僕目の前に現れた、僕と目が合うと彼らは大きなリングを水面に残してまた一つ上のポイントに降り立つ、もう僕に勝ち目は無い。 諦めて川を上がり入渓点の下流に入ってみた、昔は結構良い釣りをさせて貰った区間なのだが今日は何の反応も無く、小ヤマメの走る姿も見えない。それどころか、またしても鴨のバカップルが・・・。もう、今日の釣りは終了じゃ、なんだかんだと苦しんだ挙句、結局完敗してしまったのである。ところでやけにシューズが滑る件は、底石にへばりついた土が原因だった。浅いところで良く見たら茶色の分厚い土が層になってへばり着いている。これは、少し大雨でも降らないと取れないんではなかろうか、ここで、釣りをされる方は転倒に要注意である。
最鶴沼川を眺めた帰りしな、「少し釣ってくか・・・」と言うもう一人の自分の誘惑に負けて川に入った。既に4時を回っているのでそんなに時間は無いけれどヤマメが居れば少しは楽しめるだろう。ここは漁協の放流頼みなのである。フライをさっきまでとは別のフックに巻いた去年のオオクマパターンに取り換えてキャストを開始した。なんと釣れたのは想定していたヤマメではなくイワナだった、その後は短時間だけどツ抜けのイワナ祭りになった。ヤマメの筈だったのにイワナ。しかも放流したばかりのイワナ、たまに稚魚放流のイワナとヤマメも釣れたけど、相変わらず釣り堀感が拭えないポイントに、イマイチ感動出来ないまま今日の釣りを締めくくったのである。