釣行記 5月19日(金)阿賀川支流一の戸川の釣り

釣り

待ちに待ったキャンプ&フィッシングの季節なのだが

ゴールデンウィークもいろいろあって全く釣りに行けずに、ストレスばかりが溜まる今日この頃、とうとう金曜日に休暇を取り日曜日までの三日間はキャンプと釣りのパラダイスへ旅立つ計画を立てた。

キャンプと釣りのセットメニューは若いころからの大好物。梅雨前のシーズンを逃すのは心身に与える悪影響が計り知れないのである。木曜日の夜にパラダイスを求めて家を出る計画はほぼ1か月の間暖め続けてきたが週末になると必ず天気が崩れるという悪魔のパターンにハマってしまい、ついに今週末の好天予報が巡って来たのである。

ところが旅立ちを目前にして金曜日の予報はかなりの高確率で雨に変わった。最近の天気予報ってなんの恥じらいも無く心変わりするのでなんともいけ好かない、それでも土日は快晴と言うローカルTVの予報士の言葉に幾らか安心させられた。

結局、木曜の夜に家を出て金曜日からパラダイスと言う夢は残念ながら一日後送りになった。金曜日の午後には雨が上がると言うローカルTVの予報士の言葉を信じて現地へは午後着とした。雨が上がったらキャンプの支度を済ませてイブニングの釣りを楽しむ算段である。

金曜の朝は7時半に家を出た、未だ雨は降っておらずこのまま天気が好転してくれることを祈って磐越自動車道会津若松市へと走る。会津若松市で会津縦貫北道路に乗り換え喜多方へと向かった。天気が悪くなるのを見越して到着時間を遅らせようとちょっと寄り道をすることにした。

喜多方と言えばラーメン、この街には朝からやっているラーメン店も多く「朝ラー」と呼ばれて観光名物(地元の人も居るには居るが・・・)になっている。天気のせいで時間も出来たし私も朝ラーを一杯ひっかけて行くことにした。

喜多方ラーメンの中でも塩ラーメンを売りにする店はそう多くないがその中でも特に美味いと評判の「喜一」という塩ラーメン専門店が朝からやっているらしいので行ってみることにした。前から評判を聞いていて一度行ってみたいと思っていたが結構な人気店で行列を作らないと食えないらしく、日ごろから「並んでまでラーメン食ってられっか!」と言っている私としてはほぼ縁から離れた店だった。

流石に今日は平日なのでそんな行列が出来る程ではないだろうと思い「喜一」を目指した。カーナビを頼りに店に着いたのは9時頃だったが駐車場は既に車で一杯、私が埋めた空きスペースを最後に満車になった。見ると数台の車には人が乗っている、もしや空席待ちの人たちなのだろうか。暖簾を分けて店内に入ると空席待ちのお客さんがざっと10数人、一瞬たじろいだところで私の前に入店したおばさんがここに記入すると良いですよと空席待ちの順番表にサインを促すので「あ、ありがとうございます」と頭を下げてサインをしてしまった。普段ならさっさと帰るところだが今日は時間もあることだし一度食べてみたかったラーメンだし順番待ちをすることにした。

人気の「喜一」の塩チャーシュー麺、澄んだスープが食欲をそそる

それにしても平日の朝っぱらからそんなにラーメンが食いたいものかね(他人様の事は言えないが)やっと順番が回って来て中庭の見えるカウンターに通された時には既に10時になっていた。いやはやこの並ぶのが大嫌いな男が一時間もの間よくも頑張ったものだ、早速、店主自慢の塩チャーシュー麺を注文した。

流石に朝から並ぶ人気店だけあって美味しい塩ラーメンだった、舌の上でトロリととろける豚バラのチャーシューもこれまた美味かった。予定には無かった喜多方の朝ラーに満足して一の戸川が流れる山都町へと車を走らせた。

喜多方市街から峠を一つ越えると目指す山都町が見えてくる、もとは耶麻郡山都町として単独自治体だったが2006年に近隣町村とともに喜多方市と合併し喜多方市山都町となった。山都町と言えば蕎麦、特に新蕎麦の実を厳寒の一月に2週間ほど一の戸川の寒流に浸した後に乾燥させて作る甘くてコシのある寒晒かんざらし蕎麦が有名な町だ。例年3月に行われる「会津山都寒晒しそばまつり」にお披露目されるとゴールデンウィークには早々と品切れになる事もあるので食したい方は早めの時期に出かけると良いだろう。

一の戸川の水位も落ち着いているようだしイブニングに期待

一の戸川沿いに国道121号線を北上して山形県米沢市方面に車を進めて行くと川のあちこちで修復工事が行われている。去年の8月4日の大雨で飯豊山周りの地域はかなりの被害を受け各地で河川決壊や道路崩壊などが発生し現在も復旧工事がいたるところで行われている。近年は飯豊山周辺での豪雨被害が多く川の流れも大きく変わるので魚の姿も少なくなっているのが気がかりである。

暫く走ると一ノ木集落に出る、この集落唯一の商店の上杉屋さんで遊漁券と軽食を求めるのが常で、今回も遊漁券を購入するのにお邪魔したところ「すみません、今は扱ってないんですよ、上の温泉にありますから」とのことだった。ここに限った話ではないが、過疎化・高齢化と行きつくところもそれほど遠くは無いことを近年痛感するのである。

一ノ木集落から程なく左手高台に「山都町温泉保養センター いいでのゆ」が有る、もともとは一ノ木集落にあった一ノ木温泉の老朽化に伴って新築移設した温泉施設である。ここに釣りに来たときは必ず寄って汗と疲れを流す温泉である。

山都町温泉表センター「いいでのゆ」で二日分の遊漁券を購入する

温泉の受付カウンターで日釣り券を購入した、今日と明日の二日分を購入してテン場へと向かった。今日のテン場は飯豊山の川入登山口にある「御沢野営場」である。一の戸川沿いに北上すると川入集落に出る、飯豊山登山の入り口として数件の民宿があったが現在営業しているのは杉村壮さんと高見台さんの2件だけになった。ここで一ノ戸川は右支大白布沢と左支小白布沢とに分かれる。因みにこの二つの川は各年禁漁となっており、年号の偶数年が小白布沢、奇数年が大白布沢を禁漁としている。今年は2023年の奇数年なので大白布沢が禁漁となっている。

川入の集落を抜けて大白布沢沿いに進むとやがて開けた駐車場が見えてくる、飯豊山川入登山口である。正面に管理棟があり左手の一段上がキャンプ場になっている。早々にテントを張って、釣りに出かけようと思い管理棟にお邪魔する。入り口は空いているが人影はない。何度か声をかけるものの全く反応がない。辺りを見渡すと入口脇の壁にポストが設置されていて「管理人不在の場合、用紙に記入して利用料金を封筒に同封してポストに入れろ」旨書いてあったのでポストの横の箱から使用申込書と封筒を取り出し必要事項を記入し使用料1,200円を同封してポストに入れた。

割と立派な管理棟だが、誰もいない

これで晴れてテントが張れる、久々のキャンプに胸が躍る。炊事場とトイレがあるだけの簡素なキャンプ場だけどこれくらいがちょうど良い。僕のキャンプサイトにはAC電源もサウナも要らない、ランタンの灯とチロチロ燃える焚火にバーボン、ちょっとだけ贅沢を言うなら夜空の星灯りが有ればなおよろしい。

テントを張り始めたらポツリポツリと雨が降って来た

テン場は細かい砂利が敷き詰められていてこれはなかなか寝心地も良さそうである、早速テントを広げてペグを打ちメッシュのインナーテントが立ったころ見計らったようにポツリポツリと雨が降って来た、大急ぎでフライシートをかぶせと炊事棟にと逃げ込んだ。天気予報じゃ午後から雨で夕方には上がる筈だったのに夕まずめを目前にして降り出すなんてとんでもない話だ。でも少し雨宿りしていればそのうちに雨は上がるだろうから今のうちに釣り支度をしておこう。

釣り支度を終えて炊事棟のベンチに横になった、いつでも川に降りれるように釣りベストとロッドはすぐ脇のテーブルの手の届くところに置いた。しかし待てども待てども雨が小降りになる様子は無く、しびれを切らした私はレインウェアを被って釣り場へと移動した。

釣り支度を終えて雨が小降りになるのを待つ

昼間の気温が高かったからだろうか、川面から立ち上るまるで風呂の湯気のような霧が一面に立ち込め、それを蹴散らそうとする雨の音は清流の音に吸い込まれて一層の静寂さを演出している。唯一、川に立った私のカッパのフードを叩く雨音だけが現実を呼び覚ます。

気づけば先ほどまで竿を出していた釣り人たちの姿は既に無く、いつしかこの川は私だけの物になっていた。雨の釣りは嫌いじゃない、きっとこの雨が魚たちの警戒心を解いてくれる事だろう。思いもかけない大物がフライを咥えるのも時間の問題だろう。

水面を流れるフライをめがけて機関銃の弾のように雨粒が降りかかるが僕のフライはそれを器用に避けながら流れてゆくが一向に魚の反応はない。想像し得るポイント全てにフライを流すのものの雨粒が作る波紋の他には水面を揺らすものは無く、期待とは多くの場合裏切られるものだということを改めて確信するのだった。

雨脚は更に強くなり体力も精神力も途切れて早々に川を出てキャンプ場へと引き返した僕は、炊事棟の木のベンチに横たわって雨雲が通り過ぎるのを待った。しかし雨は一向に降り止む気配も無く、雨の中でキャンプ道具を広げて夕飯の支度を始めるかそれとも潔くテントを畳んで撤収するかの二つに一つの選択を迫られることになった。明日の遊漁券代と今夜のキャンプ代は勿体ないがこのまま炊事棟で朝日を拝むのもなんだか悲しいのでさっさとテントを撤収してする事に決めた。

天気予報は恨むまい、美味い喜多方ラーメンは食えたのだから(ラーメン食いに来た訳じゃないけれど・・・)