釣行記 5月21日(土)~22日(日)山形県周遊の釣り(その2)

東大鳥川 釣り

日本海から内陸へ

天気予報にすっかり騙されて日本海まで流れて来たが今日こそはまともな釣りをしたい、まあ、この近くなら小国川も温海川あつみがわ五十川いらがわだってあるから釣り場に困ることは無い。さて何処にしたものかと考えているうちに「タキタロウはどうかね?」とついにタブーを犯す発言が出た。「まさか、ダメでしょ」「いや、水量は有ると思うけど、あそこは堰堤に区切られるからそこそこ釣りになるんじゃねえ」「そうか?」「わからんけど」と、とうとう赤川の上流がターゲットになった。言い出しておきながら心の奥では「あれ、まずい事を言ってしまったかも」と思っている兄であった。

キャンプのために用意した食材はクーラーボックスに入ったままで朝食の支度をする場所もなく、やむなく温海温泉IC入口のファミリーマートで朝食を仕入れてそのまま日本海東北自動車道に乗る、小国川を渡ると天魄山てんぱくざんの東側を潜る『天魄山てんぱくざんトンネル』を抜け温海川を渡ってすぐ『あつみトンネル』に入る。あつみトンネルは全長が6kmを超える長さで、東北中央自動車道の『新栗子トンネル』に次ぐ東北二番目の長を誇るトンネルである。窒息しそうな息苦しさに耐えて一気に通り抜けると新鮮な空気をたっぷり取り込んだ眩い光が閉所恐怖症の私を照らす。ところがホッとするのもつかの間、五十川を渡り五十川ICを過ぎたとたんに『かたのりざわトンネル』が、そしてまたすぐに『小波渡こばとトンネル』が現れる。そして三瀬ICを過ぎると『三瀬さんぜトンネル』が現れる。日本海沿いの国道7号線の東は急峻な山が連なりJR羽越本線がそうであるように日本海東北自動車道もまた山の中を掘り進んだトンネル道なのである、三瀬トンネルを抜けるとやがて眼前に庄内平野が広がりそれまでの閉塞感が嘘のようである。

さて、タキタロウが棲む赤川上流を目指すには鶴岡市内で『山形自動車道』に乗り換えるのが近道、日本海東北自動車道を鶴岡西ICで降り、国道7号線鶴岡バイパスを北東に進むとやがて山形自動車道鶴岡ICが見えてくる。ここで山形道に乗り換えて山形方面に進むと程なく目的の庄内あさひICに着く。IC出口を右折し県道44号線(余目温海線)県道349号線(鶴岡村上線)の重複区間を通り荒沢ダム方面に向かう。梵字川を渡ると直ぐ大鳥川を渡るが、少し下流で大鳥川に梵字川が合流している。そこから下流が赤川となる。

県道349号線はタキタロウ館前で大きく西に方向を変え東大鳥川、西大鳥川を渡ると西大鳥川沿いに高度を上げやがて新潟県村上市へと山を越える。私たちの目的地は東大鳥川、タキタロウ館の前で国道349号線と別れて上流へと車を走らせる。途中、木々の間から覗く流れはいつものそれよりも厚みと幅を増し滔々と流れていく大河の様である。僕らのほんの僅かな期待は簡単に消し去られた。「あ~あ、やっぱり水量多いねえ」「そりゃそうだよなこの時期・・・」蘇岡発電所の上の橋から川を覗くと白波を立てうねる流れは川幅いっぱいに満ちており渡渉できそうな浅瀬はどこにも見当たらない。「だめだな、こりゃ」「まあ、もう少し上流も見てこようや」と、とりあえず左京渕ダムあたりまで行ってみることにした。大鳥池から流れ出す東大鳥川には蘇岡発電所に水を送る取水用の泡滝ダム、その下流に左京渕ダムそしてその下流に大きな砂防堰堤を挟んんで東大鳥ダムがあり荒沢ダムへと流れは続く、それぞれの区間でイワナ釣りが楽しめる。

新しくなった荒沢トンネル。その先が笹根トンネル

程なく県道44号線が終わり県道349号線と変わり暫く進むとやがて右手に荒沢ダムの堰体が見えると左に上る道路は潜水艦イワナで有名な八久和ダムへと進む。そして大鳥川はここで大きく西へとカーブし荒沢ダムの掃き出しへと続く。県道349号線は大鳥川の流れに沿って高度を上げ、荒沢トンネル、笹根トンネルを抜けると右手に荒沢ダム湖が見えてくる。このダム湖の流れは東大鳥川となり、インレットで左岸から西大鳥川が合流する。やがて正面に見えるタキタロウ館には東大鳥川の最上流部の大鳥池に棲むと言われるタキタロウの模型が展示されている。向かいのタキタロウ公園オートキャンプ場はタキタロウ館に申し込めば利用出来るのでキャンプ&フィッシングにちょうど良い。

右手の緑の屋根がタキタロウ館。右が西大鳥川へ左が東大鳥川へと続く

川沿いにダート道を進むと道路の両側に大きな雪渓がこちら側にせり出している、雪解け水でぬかるんだダート道を前後左右に腰を振りながら車は進み、やがて左京淵ダム下に着く。橋の上から川を覗いてみる、大イワナの一匹も泳いでいてくれれば気分は晴れるのだが深淵の大プールと化した流れには大イワナどころかちびイワナの姿も見えない。流石にこの水量では太刀打ち出来ない、ここまででUターンし帰路に就く事にした。

ダート道をそろりそろりと走り抜ける兄弟
ダート道を進むと雪渓が現れる、まだ水量は多い

下流に向かう途中、小用を足すのに車を停めた。そこは本流と分かれた小さな流れになっていて一見ドライフライでも釣りになりそうな流れだが、盛期には存在しない流れだから魚がいいるとは思えない。僕はフィッシングベストから水温計を取り出し流れに浸した。5分ほどして取り出した水温計の目盛りは5℃を指している、「やっぱり、これじゃ無理だわな」おそらくイワナたちは水底の石の下に張り付いてまんじりともせずにいるのだろう、釣りを諦める口実の裏を取りこの二日間の無謀な旅に決着を付けようとした時「イワナだイワナ」と何気なく川の様子を見ていた弟が大声を出しながら車に戻ってきた。

水温は5℃、昼くらいになれば何とかなるかもしれないが・・・

「浮いてる浮いてる、そこにいる」その言葉を聞いたら諦めるための口実なんか探している場合じゃない、急いで身支度を整えて藪を潜り抜けて川に降りた。河原は無い、両岸まで一杯になった水量の重さに耐えて分流点を目指した。本流の岸沿いのステップの深さは1m以上あるだろ、盛期ならゆっくりと浮かんできてフライを咥えそうなポイントなのだが全く反応が無い。フライを沈める釣りなら何とかなったかもしれないが。

分流へと入り、弟と交互にフライを流すもののやはり反応は無い、弟を先行させフライを交換していると「ああーっ!」と言う叫び声、「ああ、バレた!・・・」落胆の叫びは、二日にわたる釣り旅を締めくくる断末魔の叫び声のようでもあった。弟がフライを替える間に今度は私が先行する、ステップとステップの間のゆっくりとした流れは如何にも上流から流れてくる餌を待つイワナが潜んでいそうである。ちょっとだけ上流にポジションをとろうとしたその瞬間に足元のステップからフニャフニャとイワナが走った。「あゝ~!」断末魔第二弾が叫ぶ、思わず振り向き弟に「あ~!走られた!」と言うと「さっき見たイワナだ」と、なぜそれを早く言わん、もう少し慎重にしたものを・・・。その後は二人とも何のお咎めもご褒美も無くやがて車を停めた場所に出た。

如何にもイワナが出そうな流れだが、本来は水の無い涸沢なのだ

川から上がる途中で籠を背負った二人のおばあさんに出会った。「何が採れますか?」と声をかけると「草だよ草」と大笑いしながら何ともしゃれの聞いた返事が返ってきた。「どっから、ござった?」と聞くので「福島ですよ」と答えると「あ~!何年か前に行ったごどあるな・・・」庄内弁が難しいのでかいつまんで言うと、東日本大震災の後の復興工事に福島県まで出稼ぎに行っていた旦那さんの仕事が終わった時に迎えに行ったのだが、荷物が一杯あって大変だったと、いわきは遠かったなあとの事。庄内弁は好きである。同じ山形県でも内陸部とはイントネーションが大分違う。昔、北前船とともに入ってきた京言葉の影響とも言われるがとても耳障りの良い優しいイントネーションなのである。残念ながら方言の意味は理解できないものが多々あるがそこは同じ東北人、なんとなく伝わるのである。

陽気なばあさんたちと世間話をしながらウェーダーを脱ぎロッドをたたんだ。ふと周りに目をやると見慣れぬ花が咲いている、渓沿いに咲く花たちはいつも可憐んで美しいものである。コゴミの葉はすでに60~70センチメートルくらいに育っていて、まるで神秘の林のように見える。ここにコロボックルたちが住んでいると言われても何を疑うことも無い。

「あれ?これ赤コゴミじゃねえか」と弟が指さしたのは茎の赤いなにやら貧弱なシダだった。コゴミと言えば緑色で如何にも山菜でござるというイメージだが、そいつときたらなんとも貧弱でとても美味そうには見えないのだが、生食だけでなくゼンマイのように乾燥させてから食することもあるらしくゼンマイより美味だと言われるそうだ。因みにキロ4,000円とかの高値で取引されるらしい。林道を下るとあちこちに車が停まっていて、一様に腰をかがめた爺さん婆さんが何やら採っていたがどうやらこの赤コゴミだったらしい。

帰路は、山形道を外れ梵字川沿いの国道112号線を寒河江方面に向かう、道の駅『月山』に立ち寄り月山ワインを買って帰る予定なのだ。道の駅『月山』には『月山ワイン山ぶどう研究所』が併設され山ぶどうを原料とした『月山ワイン』が製造・販売されている。研究所の奥に梵字川に掛かるつり橋(ふれあい橋)を渡った先の旧国道のスノーシェッドがスノーピットと呼ばれる月山ワインの貯蔵庫になっているので、立ち寄ったらぜひ覗いてみてほしい。この『ふれあい橋』はバンジージャンプの発祥の地と言われ、かつては多くのジャンパーで賑わったところでもある。当時、ここ旧朝日村の友人は「あんなの、怖くてできねえっすよ~」と言っていたのを思い出す。

今回は、山ぶどうワインではなくヤマ・ソービニヨンの赤ワインとセイベル9110の白ワインを購入した。どちらも地元で生産されるブドウで切れ味の良い酸味が特徴のワインである。

月山ワイン山ぶどう研究所は山ぶどうのワインが有名だが今回はヤマ・ソービニヨンとセイベル9110

道の駅『月山』を少し行ったところに『米の粉の滝ドライブイン』がある。ドライブイン裏の梵字川に流れ落ちる『米の粉の滝』が望める。このドライブインの入り口脇にある『満々ラーメン』が如何にもチープで(大変失礼)大好きなのだ。長テーブルが駐車場向かいのガラス戸に向かって並べられ、見世物になっている気分が何とも言えない、ここを通ると必ず立ちよる味より雰囲気重視のお気に入り店なのである。僕はラーメンを弟は辛味噌ラーメンを頂いた。

帰路は国道112号から国道458号線に入り大江町で国道287号線へ、長井市から米沢市を経由して福島県へと向かった。

あ、言うまでもなく「ボ!」ですよ、二日もかけて「」の旅をしました。今回も道程重視の釣行記となりました(TT)

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