釣行記 6月3日(金)鮫川支流の釣り

釣り2022

大雨、増水を潜り抜けて

週の初めから毎日が雨、昨日は大雨警報と落雷注意報が出て久々に夜中の稲妻に見とれてしまった。そのおかげで県内の河川は何処も大増水となっていたのだが、一時間ごとに各地の降水量をチェックしていたところ鮫川の南側の支流だけがやたらと降水量が少ないのを発見した、天気予報は今日の午後から雨が降り出すとの事なので朝一出発して午前中だけのちょい釣りを狙って早朝5時に家を出た。

鮫川本流沿いに雨上がりの県道14号線をいわき方面へと向かうが、道路沿いの鮫川本流は濁流と化し、ゴーゴーと流れる川の音が車のガラス越しに聞こえてきそうだ。「本当に釣り出来るのか・・・」自分の判断を疑う自分がいる。

入遠野川も濁流と化した

右手に「柿の沢発電所」が見えたら右折し鮫川を渡り県道134号線(皿貝勿来線)に入る。古殿町方面から四時川に出る最短ルートになっている。因みに「柿の沢発電所」はJX金属株式会社が所有する自家用発電所だが現在は東京電力勿来線に接続されているらしい。

さて県道134号線は田人町黒田で県道105号線(旅人勿来線)にぶつかるのでそこを右折しさらに進むといわき市旅人町で国道289号線へと接続する。この付近には「田人おふくろの宿」や「田人ふれあいの里キャンプ場」などの宿泊施設がある他、左折して勿来方面に向かうとおしゃれなレストランやカフェなどがありちょっとした観光地にもなっているらしい。

林道を越えて四時川の上流部へと進むとやがて目の前に四時川の流れが見えてきた、おそるおそる川面に目をやると、来る途中の河川の濁流が全く嘘のように何とも澄んだ流れがそこにあった。「ふふん」一晩中観測データとにらめっこしていた甲斐があったというもの、車を停めたらさっさと支度を始めよう、午後からの予報が気になるからね。

流石に水量は少なくないが、濁りは全くないし釣り人もいないなんという幸運だろう。川に降りる途中流れに浮かぶヤマメを見つけた。もう何も言うことはない、ここはヤマメ釣りのパラダイスなのだ。(の、筈だ)。

本当だったらパラダイスの筈だった

気づかれないようにそっと下流に回りこみ、流れを覗いた。「いるいる」どうやらこちらに気づいてはいないようだ。リールから静かにラインを引き出すとカリカリカリと乾いた音が谷間に響いた。軽くロッドを振りラインを送る、勿論気づかれないように流れの上を避け右岸の河原に向けてラインを伸ばした。その瞬間、ヤマメはスーッと上流の白泡に消えた。

もしや下流に回った僕を実は見ていて気付かぬふりをしていたのではあるまいか、安心してキャストを始めたとたん、ここぞと言うタイミングで「バ~カ」と捨て台詞を残して消えていったような気がしてならない。なんともみじめ過ぎるじゃないか、出鼻を挫かれて動揺が収まらない。

次のポイントに移動、瀬の肩にそっと近づいたとたんにヤマメが走る、その次のポイントも。たまに出るヤマメのすばしっこい事ときたらもうスレまくっているじゃないか。この雨ですっかりリセットされたろうと思っていたのに全く当てが外れた。まあ、それはそれで仕方が無い、慎重に慎重にやるだけである。

一時間ほど釣り上がったころ、ポツンポツンと雨が落ちて来た西の空を見上げると灰色の雲が谷の隙間に蓋をしていた、徐々にこちらに向かって移動してくると思ったとたんにバチバチと音を立てて私をめがけて大粒の雨が落ちて来た。慌ててベストの背からカッパを取り出してかぶったけれど、既に顎から雨が滴るほど濡れてしまっていた。ゴロゴロと雲の中を走る雷の音がだんだん近づいてくる。身を隠す場所も無くカッパ頼みで雨の中に立ち尽くすこと5~6分、雨が止んで空から僅かに明かりが線となって川を照らした。

少し上流に移動して、釣りを再開した。流心の左側の沈み石の脇にフライを落とすと流れが開けるあたりでフライが消えた。そっと起こした竹竿にヤマメのテンションがかかりフライラインとリーダーが水面に一直線になった時、ヤマメが水面を割って宙に舞った。本日一尾目のヤマメがネットに入った。

なかなかの走りっぷりだった

「お、やっと調子が出てきたな」少し安心して上流のポイントに向かう途中、またしても大雨が私と川面を打つ、目の前の景色が縦じま模様になるほどの雨は水面に無数のリングを重ねて、波立つ水面は川底の様子をすっかり隠した。雷の音がさらに激しくなり稲光が「ピカッ!」と言う耳には聞こえない音を出して雲の中を走った。

またしても、雨の中で立ち往生していると、突然目の前の景色がフラッシュしたかと思ったとたん「バリバリバリ、ドドーン!」と言う大音量に一瞬身体が硬直し心臓が激しい鼓動を打ち始めた。正に口から心臓が飛び出るってこんな感じなのだろう。川から3メートル程上の林道にを走る電線がバチバチと音を立てて火花を上げている。流石に、これ以上ここに留まる勇気は無い、そそくさと川を後に逃げ帰りましたとさ。

それはそれとして、どこの川も増水・濁流だったのにちゃんと釣りが出来た某支流、データをチェックするのは大事だと思った、昨今の急変する気象状況下では特にそうである、逆に言えば事前の情報を確認して諦めることも大事なのである。