3月20日 余笹川釣行

 ポカポカ陽気に誘われてまたしても栃木へ。

連休初日、釣りの予定は無かったのだがあまりの陽気の良さに居ても立ってもいられずに車に飛び乗った。もう10時だし、余笹川に着く頃はお昼近くになりそうだ。それにしても3連休の天気予報は大荒れの予報だったけどなんとも良い天気、こんな日は川原でコーヒーでも飲んだら気持ち良いだろうね。矢吹インターのゲートの所で電光掲示板の文字が目に入った。「矢吹−白河間、事故渋滞3km・・」「えっ?」って思った時には既に車はゲートを通過していた。「えー!参ったなあ、どんだけかかるかなあ・・・」今更、どうしようもないし諦めはしたものの何とも憂鬱。

事故渋滞
高速に乗ったとたんに事故渋滞に巻き込まれてしまった・・・

せっかくの良い天気なのに出鼻をくじかれた感じだ。184kポスト付近ついに車が停まった。「抜けるまで一時間はかかるかな」まあ、焦ってもどうしようもないけれど、何となく大事な時間を損した気分になる。どれぐらい待っただろうか、白河インターを過ぎる頃になって車が流れ始めた。どこにも事故の形跡は見当たらないがとにかく良かった良かった。

っと、余笹川に到着した。いつものコンビニでお昼を購入しいつもの店で遊魚権を購入した。既にお昼を過ぎてしまったのだがまずは釣りをすることにした。今日はいつも入らない下流に向かった。しかし既に一人フライマンが川の中を歩いている、僕は下流を諦めいつもの入渓ポイントから入ることにした。今日はティペットにガガンボフライを結んだ、特に何のハッチも見られないが春先には実績のあるフライだ。もう既に何人かが入ったのだろう幾つかの足跡が川原の砂に残っている。右と左から流れが合わさり少し大きなプールになっているポイントには何匹かのヤマメが入っている。きっと攻められ続けて嫌になったのだろうか、いつもならライズが見られるのだが今日は静かだ。しばらくじっと水面を眺めていると瀬尻で小さなライズが起こった。その横で小さな、そう10cmほどのヤマメが宙に舞い、「ポチャ」っと、それはそれは恥ずかしそうな音を立てて流れに落ちた。

室原川
もちろんこんなヤマメを狙っているわけではないのだが

んなヤマメを狙っているわけではもちろんないが、散発で起こるライズに僕はCDCのレッグが着いたガガンボをダウンクロスで送り込んだ。残念なことにフライを流すとパッタリとライズがとまる、決してドラグがかかっている訳でもなく水面を荒らしている訳でも無いのだが明らかに反応が無くなるのだ。じっと待っているとまたライズが始まるのだがフライを流すとそれまで賑やかだった水面が急に静まり返るのだ。ハッチマッチの釣りはこれだから楽しい、僕はフライを#16のクロカワゲラに変えた。石の周りを何匹かのクロカワゲラが這い回っている、解禁日に一番活躍したのもこのフライだった。しかし相変わらず反応は悪く僕はフライを#24のユスリカアダルトに付け替え、何度と無く流れをトレースするものの僕のフライには全く反応しない。CDCのウィングの着いたこの小さなフライをあざ笑うかのようにそのすぐ横で波紋が起き、僕はだんだんと焦燥感にかられて行くのだった。フライは黒のスレッドにフレックスボディレースを巻いたミッジピューパ#20に替えた。反応はすぐに出た、明らかに今までとは違いガンというあたりが手元に届き遂に僕の手の平に今日始めてのヤマメが乗った。せいぜい15cmくらいのヤマメだが苦労した一尾だけあって先ほどまでの憂鬱が一気に消え去った。

待のポイントは次の堰堤だった。小さなぬくもりを流れに戻してやった僕はラインをリールに巻き取ると上流に目をやった。堰堤の下の溜まりに人影が見えた、一人いや二人どうやら子供のようだ、小学生か中学生位の子は手に大きなネットとルアーロッドを持って大声で騒ぎながらこちらに下って来る。よく見ると堰堤の上にまた二人、どうやら仲間らしい。川で遊ぶ子供たちを見るのは大好きでなかなか清々しい気持ちになるのだが今回は別、僕が楽しみにしていたポイントを見事に駆け回りながら下って来るのだ。それでも無邪気な子供たちを叱るような大人気ないまねは出来ないし(笑)ここは川を上がって昼食にすることにした。

室原川
コーヒーの香りが風に乗った。時間がゆっくりと流れて行った。

ンビニで仕入れたヤキソバをいただくが、なんとソースがジュレのように固まっていて不味いことこの上ない。レジの女の子に「暖めますか?」って聞かれたときどうせ冷めるんだからと思い「あ、いいです」って言った自分を憾んだ。半分残った昼食はコンビニの袋に戻し僕はパーコレーターに火をつけた。まったりとした時間にコーヒーの香りが絡まってなんとも良い気持ち、まだ1時を回ったばかり、午後の釣りには早すぎるし少し昼寝をすることにした。

ーッと風が吹いて僕は目を覚ました。下流に入っていたフライマンだろうか目の前のプールで粘っている。僕はしばらくの間そのフライマンの動きをぼんやりと眺めていた。どれくらい時間が経っただろうか、僕はここでの釣りを止めて上流に移ることにした。あまり変わり映えはしないと思うのだが。

余笹川上流工事現場
渓流保全工事。渓流を守るためには一度壊さないといけないらしい・・・。

流に行くと相変わらず支流の工事現場が大きな音を立てている。H22年3月25日まで土石流に備えた堰堤整備工事をしているそうで、工事看板には渓流保全工事と書かれていた。工事の土石流が川底の石を飲み込んでいる。泥が川底の石に堆積しツルツル滑って危ない事この上無いのだが、きっと「毒をもって毒を制している」のだろう。この毒がなくなるまでは何回の大水を待たなければならないのだろうか。上流のヤマメも相変わらず小さく、やはり結構な入渓者があったらしく岸辺の砂には幾つもの足跡が残っている、それに比例するようにヤマメの出は頗る悪い。数匹の木っ端ヤマメと遊んでもらいいつもの場所で終わりにするところだったがどうもこのチビヤマメだけで釣りを終えるのは後味が悪い。

室原川
遂に、待望の余笹イワナを手中に収めた。僕の口元が緩んでいるのが判る。

事用に作られた大きな土管が並ぶ道を超え、わずか数十メートルの区間を釣って終わりにしよう。ここにも足跡は残っている、期待はしないが深みもあって良いポイントもある。ここに来て少し風が出始め、僕のフライはわずかに風にあおられ岸辺の低い枝に絡んでしまった。「せっかくのポイントなのに」後悔は先にたたないのだ、フライをはずしに移動しようとしたその時、足元から魚影が走った。「あ、デカイ!」やはり後悔は後になって圧し掛かってくるものだ。クネクネっと上流に向かったのはその動きからイワナに違いない。この川の数少ないイワナだ、無念、後悔がどんどんと襲い掛かってくるのだった。

室原川
あまりに嬉しいのでもう一枚。

を取り直しておそらく最後になるだろうポイント、木の枝が川に垂れ下がったその脇のゆるい流れにガガンボを落とすと、派手ではないが今までのそれとは明らかに違う波紋が広がり僕の右手は無心で宙を突き刺した。ロッドティップがグングンとお辞儀をしている「お、デカイ」ティペットの先では、艶めかしい動きの魚体が走り回っている。朱点がまぶしい良型のイワナだ、さっき走った奴に違いない。23、いや24cm位はあるだろう。さっきまで圧し掛かっていた後悔などもうどこにも残っていない。釣り人は真に持って現金なのである。