4月10日 高瀬川釣行
密かに大物イワナを狙って出かけたのだが悪夢が待っていた。
スルーダンパラシュートは秀逸だと思う。ブラウンの#14とグレイの#16を準備した
朝からポカポカ陽気の良い天気で鼻がムズムズする。こんな日は何をやっても手につかないのだけれど午前中はいろいろと用事があって出かけられない。用事が済んだのが12時過ぎ、それからのんびりと出発した。実は先週室原川で結構良い釣りをしたものだから、今朝早起きをしてブラウンのスルーダンとシロハラパターンのスルーダンを数本巻いて置いた。エアロドライウイングをボディにしたスルーダンパラシュートはメイフライパターンとして今一番の実力パターンだと思っている。浮力・速乾性・視認性とどれをとっても申し分ないし何しろタイイングが簡単でスタイルと着水したときのバランスが絶妙。カラーとサイズを変えれば一通りのメイフライに対応出来ると思う。こんな素晴らしいフライを考え出したO本さんに感謝である。でもこのフライに頼りきってしまうのはいかんなあ、と反省。
さて、出発はしたものの目的地を決めていない。室原川なら安心だけれど、どうしたものか。一瞬、去年見た数尾の尺イワナが頭を過ぎった。そんなにうまい話は無いだろうが目的地は決定した。しかし、天気予報は風速5m〜7m、果たしてこの強風下どうなることやら。現地に着いた頃時計の針は1時半を回っていた、今更慌てても仕方が無いのでここで腹ごしらえをしてから川に下りた。いつもの入渓点にはのんびり泳ぐヤマメがいるはずだ。護岸の上からそーっと覘くと「居る居る。」いつもと同じ場所でいつもと同じように浮いては沈みを繰り返している。よく見ると川底にはイワナも定位している。思わずニッコリしている自分が分かる。
少し下流に下り入渓した。川の流れが岸に当たり小さな深みになっている小さなポイントにブラウンのスルーライトダンパラシュートを送り込んだ。流れに乗ったフライが反転流に差し掛かり一瞬止まった時にバシャと言う音を立ててフライに出たがフッキングはしなかった。止まったときに微妙にかかったドラッグのためか餌を捕るのがまだ下手なのかそれとも僕の腕が悪いのか分からないけれど彼は二度と顔を見せることは無かった。最初のポイントで姿を見せてくれたヤマメに気を良くした僕は焦ることも無く先ほどヤマメが遊んでいたプールに向かった。彼が居るのは左岸の護岸ギリギリのプールの尻、僕は右岸に回りキャスティングポジションを取った。フォルスキャストは2回、ヤマメの上流1メートルに右カーブキャストでフライ先行で流す。キャスティングはうまくいったはずだったが上流からの強風にフライとともにフライラインまで吹き戻されて目的のヤマメの頭の上に落下した。突然の出来事にびっくりしたヤマメはあっという間にどこかに消えた。僕はこんな日に#2ラインをセッティングした自分を恨んだのだった。
よく見るとリールのハンドルが無いのがわかるだろうか・・・(涙)
風 は相変わらず強く、狭い流れの両脇に茂る枯れた葦の茎にフライが引っかかったりトラブルが絶えない。だんだん集中心が途切れ始めた頃ベストのポケットの携帯電話が鳴った。会社からの電話だ、「こんなときに・・・」と思いながらも一息つくにはちょうど良いタイミング、葦の中に入りベストを脱いで電話に出た。一通り仕事の段取りを付けてまた川に入った。フライラインを引き出し、バックキャストに入ったとき目の前から何かが水面に落ちた。なんと、リールのハンドルが取れてしまったのだ。それはまるでスローモーションのようにゆっくりと水面に落ちると足元の石と石の間に落ちていった。とても手の届く水深では無く僕はやむなく回収を諦めた。
絵に描いたようなポイントからヤマメが出た。サイズが問題だけどね。
なんという日だろう日ごろの行いの悪さが祟ったのか、ため息が出た。まあ、リールのハンドルが無くても特段釣りに支障が出る訳でもないしこのまま釣りを続けることにした。瀬尻からの流れ出しが護岸にぶつかり深く大きなプールとなりカーブする流れ、大きな石がいくつも沈む絶好のポイントにフライを落とすと小さな飛沫が上がりロッドティップがしなった。「やっと、釣れたよ」思わず言葉になった。20cmにも満たないサイズだったがとりあえずこれで『ボ』だけは免れた(笑)。ちょっと可哀想なサイズだったがストマックの中身を見せてもらうと、夕べ浅場ででも捕食したのだろうか胃の中はユスリカで満たされていた。さすがに今日の捕食物は見当たらない。この風だもの餌になる虫なんてあっという間に吹き飛ばされてしまうものなあ。リリースしたときに釣り人の足跡を発見し初めて気づいたのだが、どうやらここが入渓ポイントになっているらしく、護岸の上から簡単に降りられるようになっていてしっかりと踏み後が出来ていた。
胃の中身はほとんどがユスリカのアダルトだった。オオマダラも一匹
実はこのポイントのすぐ上が去年尺イワナと出会ったポイントだ、広い流れが急に狭まるポイントは水深が増し沈んだ石が結構な隠れ家になっているだろう。去年このポイントに立ったときの出来事、リールからフライラインを引き出しているとそいつは上流からやって来て反転して上流を向くと何を勘違いしたのか僕の足元に擦り寄って定位した。紛れも無い尺イワナに僕は一瞬ビックリして呆然と足元のイワナを見ていると一瞬彼と目が合った。どうやら彼も僕に気づいたらしく目をクルリと回すと僕を上目で見ながら恥ずかしそうな顔をして静かに上流に消えて行った。(「そんな馬鹿な話があるか!」って、少なくとも僕にはそう見えたのだよ)その光景が脳裏にしっかりと焼きついており今日はこの場所に来たのだがどうやらそんな状況ではないらしい。そこは全く反応が無く、空しく風と戦うだけだった。
でも、もうちょっと上流にも尺イワナポイントがあるのだ、そこも去年尺イワナを発見したポイントで実に3匹のイワナを確認していた。僕は途中のポイントを省きそのポイントに直行するべく川を上がり土手沿いに目的地に向かった。ポイントの下流に下りるべく葦の藪に入るとなんときれいに葦が倒れ踏み跡が出来ている、さすが釣り人はみなポイントを熟知しているらしい。案の定ここでも全くの無反応で、風との戦いに精根尽きた僕はここで川を上がることにした。対岸の土手に上がるとなんと前方2、30メートル先に餌釣りのおじさんを発見した、きっとさっきの場所から入ったのだろうか、魚も出ない訳だよ。
下流域の流れ。風と釣り人には勝てなかった
車に戻る途中、畑仕事をしているおばあさんに「釣れたかい?」と声をかけられた僕は「これくらいのがね」と親指と人差し指を開いた。さて、これからどうしようか考えたが、このまま帰るにはあまりにも情けないので別の場所に移動することにした。ずっと下流の浪江町まで下りいつもの場所に行ってみると車が三台停まっていた。でもここまで来たのだからちょっとだけ釣ってみることにした。もしかしたら釣り残しが出てくれるかも知れないし、さっきまでのロッドとリールは替えて気分一新で川に下りた。相変わらず風は強く#2のタックルではやはり厳しい。30分ほど釣っただろうか、上流のポイントとほぼ同サイズを2匹釣ったところで目の前にフライマンが現れた。ここで今日の釣りは終了、完敗だなあ。次回は風の無い日にリベンジだな。